2018年に誕生した黒毛和牛のブランド「梶岡牛」。梶岡牛の魅力をひと言で表現すならば、「滋味あふれるおいしさ」です。その理想とするおいしさを形にするために、「自社製の発酵飼料」「おいしさのための時間」「おいしさを求めた血統醸成」という3つのコンセプトを掲げています。一般的に黒毛和牛は月齢20数ヶ月で出荷される中、梶岡牛は32ヶ月から最大40ヶ月間と長期肥育を採用。その歳月の証として、「梶岡牛1155」といったように、牧場で過ごした4桁の日数を1頭ごとに出荷履歴証明書にクレジットし、出荷しています。
牛の肥育事業も軌道に乗り始めた1988年、牧場直営レストラン「FIRE HILL」を開業。その当時より、2代目社長梶岡春治は、「いつかは自分の牛をここで提供したい」という思いを抱いていました。歳月は流れ、自然とその思いは息子・秀吉に受け継がれ、30年越しにカタチに。そこで、行き着いたのが3つのおいしさのコンセプト。自分の牛だと胸を張れる和牛を、という梶岡親子の思いが引き寄せた、覚悟の黒毛和牛です。
牛も人も同じく、ストレスは健康の最大の敵です。牛の寝床の敷料は1ヶ月から半年ごとに入れ替える牧場が多い中、私たちは2週間ごとに行い、牛にとって快適な環境を整備しています。敷料には、防腐剤が使われていることの多い建築資材は一切使いません。さらに、リアルタイムに牛の活動情報を収集し、最適な飼養管理をサポートする「ファームノートカラー」を導入。首につけたセンサーで1頭ごとに健康管理を徹底し、わずかな体調の変化も見逃しません。
牛の活動データを人工知能で解析するセンサーデバイス。飼養形態や品種、個体ごとに異なる牛の授精適期や体調の変化を高精度に検知します。
米ぬかや酒粕、醤油粕などをベースにした自社製の発酵飼料は、人が食べても安全なもので、抗酸化力に優れています。飼料専門のコンサルタントとして獣医師の方に監修に入っていただき、試作した飼料と血液検査のフィードバックを受けては、配合比率や素材を幾度も変え、数百通りものレシピの中から試行錯誤の末に完成。また、地域の農家の方とも提携し、梶岡牧場の堆肥を使って飼料米をつくっていただくなど、物質的かつ金銭的な循環型農業も徐々に形になってきています。
梶岡牧場では、受精卵移植と人工授精の両方を行っています。繁殖事業とは、いわば産婦人科医。24時間、365日気は抜けません。母牛には肥育用とは別に、栄養価や成分も異なる繁殖用の発酵飼料を与え、健康な子牛を生むための体づくりを行います。一般的に和牛は、霜降りや体の大きさの血統を優先するのが王道ですが、梶岡牛はあくまでも味を追求。理想とする梶岡牛の“おいしい血統”への道のりは始まったばかりです。
脂のさらりとした喉越しのよさ、赤身のしっかりとした濃い味わい。それが、梶岡牛の滋味あふれるおいしさです。実は、牛肉の格付けの世界で重視されるサシ(霜降り)は、牛のビタミンコントロールで脂肪細胞が分化することで生まれるもの。私たちは、ビタミン低下によるストレスで、牛が酸化体質になるとおいしさが損なわれ、「和牛を食べて胃がもたれる」のは、このストレスがかかった脂が原因の一つと考えます。本来、月齢30ヶ月を超えると、体を動かすことも困難になる牛が多い中、梶岡牛は走り回るほど健康的。上質な餌を与え、健康的に育てることも、おいしさの秘訣です。
梶岡牛のセカンドラインとしてスタート。梶岡牧場では黒毛和牛の経産牛を、独自の給餌・肥育プログラムのもと、これまでの経産牛の常識を覆す8~12ヵ月もの長期間をかけて再肥育。命を育み続けてくれた母牛に敬意を払います。この歳月により、母牛から肉用牛へと細胞がターンオーバーし、「本来の価値」を創造した上で送り出せるのです。歳月が“旨み”へと変化した「梶岡牛マザービーフ」の芳醇な香りと旨みを、一度味わってみてください。
幾度とない廃業の危機を乗り越え、誕生を迎えることができた「梶岡牛」。サシの美しさを評価する格付けにこだわらず、あくまでも美味しさを追求するために、業界の常識を越えた“和牛としてきちんと成熟させる”超長期肥育を採用しました。家畜人工授精師、受精卵移植師の資格も取得し、現在十数年かけて梶岡牛にしかできない血統醸成に努めています。さらに、大学時代に学んだ食品発酵学を下地に飼料、堆肥と自家製にこだわるのも、すべてはおいしさのため。梶岡牛を目当てに全国から、世界各国から多くの方が足を運んでくれる日を目指し、梶岡牛のさらなる可能性に挑んでいきます。