「出所したら,かぁちゃんと弟を連れて『梶岡牛』を食べに行くのが夢になりました。」
こんなこと言われたら嬉しくて堪りませんね。
最終プレゼン&ポスター披露で訪れた刑務所で対面した受刑者の方の言葉。
ポスターを作ってくれた受講者チームで込めた想いや,力強いプレゼンの言葉一つ一つに,
思わず私の涙腺は崩壊寸前,必死に目をパチパチしながら堪える自分がそこにいました。
謹賀新春、本年もどうぞ宜しくお願い致します。
私たち梶岡牧場が2023年の年賀状に使わせて頂いたのは,
実は,【刑務所内で受刑者に広告の作り方を伝える、日本初の職業訓練】として,
『梶岡牛』の広告ポスターとしてデザインされたものなのです。
牧場のある美祢市には日本初のPFI手法による刑務所『美祢社会復帰促進センター』があります。
気鋭のデザイン事務所『セイタロウデザイン』と連携実施で広告ポスター製作が行われています。その2回目となる題材として選ばれたのが『梶岡牛』だったのです。
美祢市,法務省,小学館集英社プロダクション,セイタロウデザイン,そして生産者である梶岡牧場が,協働で行った広告ポスター製作の職業訓練なのです。
https://seitaro-design.com/project/642/
美祢社会復帰促進センター「販売戦略科」刑務所内で受刑者に広告の作り方を伝える、日本初の職業訓練。
それぞれ皆さんが考えてくれた『梶岡牛』広告ポスターへの想いなんかを一人一人
受講生の方々が考えられた150個を超えるキャッチコピーの中から研ぎ澄まし,
削り出していく製作のプロセスを聞き,
いよいよ出来上がった広告ポスターの披露,初対面。
見た瞬間,ハッとしてしまいました。
目に飛び込んできたキャッチコピーは『挑 戦 状』
私たちの仕事や肉に対する姿勢から表現するピッタリの語句がこれだったようです。
プライドを持って生産している私たちとはいえ,食べ手の生活者の方々に向けてなかなか強い言葉過ぎて使えない。
生産者目線からは間違いなく出てこないキャッチコピーでした。
なんか私たちの根底にある気持ちを代弁して貰った感じがして,再びジーンときちゃいました。
講師をされたセイタロウデザインの原田 剛志さんの導き方に感服でした。
プロセスってすごく大切,バイアスは無くせ!
さて,そのための準備は一年以上前から始まっていました。
法務所から出向の地方創世監と,美祢市の担当の方が牧場に来られて詳細の説明に始まりました。
正直,その担当者から話を頂いた時にはあまり期待はしていませんでした。スミマセン💦💦💦
職業訓練なんだから…と。変なバイアスを掛けてはいけませんね,大反省です。
そして「梶岡牧場として地域に少しでも恩返しが出来るのならばお手伝いを…」というくらいの気持ちでした。
当社の社長,梶岡春治も,かつて保護司を長らくしていた事もありまして。
まずは,
2021年冬,セイタロウデザインさんが写真撮影に牧場に来場。
そして2022年10月,刑務所内でポスター製作のために生産者がプレゼンする日。
タイミング悪く,その日は子牛市場の競り日程と重なってしまい,残念ながら刑務所には出向けず,
無理を言ってリモートで受講生と繫いで貰えました。これはコロナ禍の良い面でした。
美祢市の担当が,幼稚園~高校まで一緒だった,ちんぐう(同級生)に変わっていたのも何かの縁だったのでしょう(笑)
牧場の仕事のこと。
と畜からお肉にするまでの想いや関わる人たちのこと。
そして
牛飼いとして『梶岡牛』にかける想い。
を伝えさせて頂きました。
もちろん,リモートとはいえ,受刑者の方々の顔は画面越しでは見る事は出来ませんし,
声すら聞く事は叶いませんでした。
ただ,事前に用意された質問には受け応えする事もでき,私たちの熱感は伝えられたのかなと。
刑務所内でのプレゼンの会場には『セイタロウデザイン』の代表,山崎晴太郎さんも同席。
デザイナーとして世界での活躍,数々の受賞歴は言わずもがな,東京オリンピック・パラリンピック組織委員会のクリエイティブアドバイザーや,『情報7daysニュースキャスター』や『真相報道バンキシャ!』にコメンテーターとして出演中の彼。
塀の中に入る時にはセキュリティ上,名刺ですらも持ち込めないので名刺交換なんか出来るはずもなく。
御礼も含めて後ほどメッセージをしたら,実は『FIRE HILL』にもこっそり食事に来てくれていて,
その上,美味しかったと家族の方にも食べさせたくてECサイトで『梶岡牛』を取り寄せてもくれてたみたい。
翌月,美祢市から感謝状贈呈式の後,時間を取って牧場に立ち寄ってくれました。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000038.000004862.html
美祢社会復帰促進センターにおける職業訓練の取り組みについて、美祢市から感謝状を受領しました。
-受刑者が広告制作の基礎を学び、美祢市の特産品「梶岡牛」「ますバーガー」の広告ポスターを制作した職業訓練で、地域との共生のまちづくりに貢献-
ポスターデザインの事はもちろん,CI(コーポレート・アイデンティティ)のこと,
秋吉台・秋芳洞の観光デザインのこと,そして私のオーベルジュの夢などなど…
狭義なデザインではなく,広義で深いデザインのこと,超絶ワクワクする時間..。
話は尽きず,飛行機飛ぶギリギリの時間まで多岐にわたる話で盛り上がりました。
あと数年,刑務所内での職業訓練の取り組みは続くようなので,
セイタロウさんと色んな事が動かせたらなぁと思っております。
まずは彼らが出所した時に,
『セイタロウデザイン』のプログラムでに直々にデザインの組み立て方をレクチャーして貰ったという経験は胸を張れるし,
出所してからの風当たりの強い世の中できっと支えにもなってくれるはず。
加えて『梶岡牛』のポスターを作ったんだという自信を持って貰えるよう,
『梶岡牛』を高みに連れていくのも私たち自身への【挑戦状】となりました。
2023年も,
彼らの想い×セイタロウデザインの想い×梶岡牛の想い
それぞれ個としてリニアに成長していくと同時に,掛け合わされてエクスポネンシャルに成長する事を誓う年頭であります。
ポスターは1月中旬頃から随時,お取引先様のホテルやレストラン,美祢市や法務省などの関係機関で目にする事が出来ます。
こういった物語があったんだなぁと想い眺めて頂ければ幸せます。