新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が世界中で猛威を振るう中、『畜産家』として、いろんなことが頭の中を巡ります。まず、ちょうど10年前、2010年4月20日、宮崎で発生し、全国の畜産農家たち一瞬で震え上がらせた『口蹄疫ウイルス(FMDV)』です。
ただ、その『口蹄疫』が一つのトリガーとなり、当社も100%契約してた『安愚楽牧場』は倒産…その渦中に巻き込まれ、梶岡牧場も崖っぷちに指を掛けるような経験もしてきました。
2010年4月から10年以上、『見えない敵(ウイルス)』に心を緩めず闘ってきた『畜産家』として、直感的に今回の新型コロナウイルスは一言「まずいな…」と感じてました。
梶岡牧場では車両の消毒の他、入場者の長靴&車内・ ペダルも消毒し、連絡先などの入場記録もして入場。
『牧場への不要不急の入場は厳禁』 を2010年から徹底して来てます。
消毒ゲート用は『グルタプラス』(ビックリするほど高い)で外からのウイルス&菌をシャットアウト。
場内の踏み込み消毒用は『〇〇〇〇』(食品添加物としても使用可)で現在メーカーとテスト中です。
場内の踏み込み薬選択は、『いい菌叢環境を絶やさず、かつ食肉生産現場としての安全性』を考えた末の選択です。
消毒薬の抗菌スペクトルや濃度も10年間、論文などでしっかり勉強して選定してきました。
そのあたりは、すごく長くなるので別のブログで(笑)
今回も新型コロナウイルスも
『手洗い』はもちろんのこと、
外から帰られたら『靴底の消毒』もして下さい!!
口蹄疫の時、ウイルスの大きなキャリー要因となったのは車両と靴底でした。
にも関わらず、今回のコロナウイルスの際には空港も駅も病院も踏み込み消毒が全くされてない…なんか片手落ちだなぁと『畜産家』ながらに思った次第です。
ですから、うちは自宅の入口での消毒を始めてます。クルー(社員)にも消毒液を持ち帰ってもらって、帰宅時、玄関に入る前に靴底を消毒するよう徹底してます。クルーの家族も護らねばなりませんからね。
決して不安を煽るわけではありませんが、口蹄疫の時には…
- 宮崎県という局所的。
- 『口蹄疫』には既ワクチンがあり、ワクチン接種できた 。
- ワクチン接種後、疑似患畜(今回のコロナでいうところの濃厚接触者か?)はもちろん、緩衝地帯として移動制限区域内の牛・豚・ヤギ・羊まで殺処分した 。
そこまで徹底してやっても『終息宣言』がなされたのは…4ヵ月後の2010年8月27日だったことを、今一度、皆さん、しっかり考えてみて下さい。
そして、やってきた和牛への影響…
- 枝肉価格の急落 (枝肉平均価格2,800円→1,900円)
コロナの影響で海外への輸出が事実上停止、進められてた『和牛の中国輸出解禁』もおあずけ、 オリンピック中止で 決定的な和牛需要の喪失。 - 子牛価格の急落 (平均価格 約75万円→50万円を割り込む)
和牛の枝肉価格に後追いで連動、肥育農家が先が見えなくなり購買意欲は低下。それに加え、山口県の市場ではモラルのない農家が血統偽装をしてたため、ダブルパンチで急落。 - 飲食店の休業及び自粛
梶岡牧場の直営レストラン『FIRE HILL』もそうですが、飲食店の営業自粛により和牛の消費はガタ落ち…。
2001年 BSE(牛海綿状脳症)
2010年・2011年 口蹄疫&安愚楽牧場の倒産、
そして、
2020年 今回の新型コロナ禍…
梶岡牧場としては10年ごとに大きな、大きな、試練がやってきてます。
和牛の繁殖~肥育~レストランまで一気通貫の垂直統合でやってる梶岡牧場はある意味『トリプルパンチ』を喰らったような感じです。
崖っぷちから這い上がる事への免疫は出来てたつもりですが、今回のコロナ禍は畜産業界だけでなく、全ての業種で【行動変容】が起きるのでしっかり生き残るため、梶岡牧場として『変わらないために変わり続ける』ことをしていきます。