梶岡牧場


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NEWS

”命をいただく”ということ。

2021.05.22

牛と対峙する瞬間,瞬間,一緒に過ごす時間を大切に。

 『牛飼い』って”いただきます”,”ごちそうさま”の意味を伝えることも仕事だと思っていて。
とはいえ,実は46歳にして,この時初めて”屠畜の瞬間”に立ち会ったのです。

 実は私,”命をいただく”ことを務めて言わない時期がありました。
なぜなら食べてくれた人の「美味しくない」が聞けなくなるから。

 「同じひとつの命を我々が奪ってしまうのならば”美味しい!” と思わず笑顔になるような喜ばれる命の繋ぎ方をしたい!!」
『梶岡牛』という自分が納得する牛(肉)づくりを念頭に考える中で,
畜産家つまり牛飼い自身がこれを強く伝えちゃうと,
食べた人の率直な「美味しくない」が聞けなくなるな。。。と思っていました。 これは美味しさを追求する牛を育てる畜産家としては,デメリット以外の何ものでもないな…と。

 そんな中,
2020年4月コロナ禍の中,北海道『酪農学園大学』へ獣医師になるべく旅立った娘が,
「お父さん,夏休みに帰った時に屠畜場の見学できんかねぇ…」と連絡してきたのです。
 入学式も出来ず,な状態での学生生活のスタートでしたが,
解剖の実習などは少人数ですが行われており,その中で何か思う所があったのでしょう。

 『梶岡牛』の出荷にあわせ,『周東食肉センター』を管理されている安堂畜産の安堂社長にお願いして, 屠畜場見学をさせて貰える事になりました。
(もちろん北海道から帰省の娘は自費でのPCR検査後,隔離期間を2週間以上おいてからの見学でした)
 内臓検査の所も家畜保健所の獣医師の先生方の計らいで,娘に丁寧に教えて下さってました。

 奇しくもその子は,初めて梶岡牧場で母牛の乳ではなく,私たちの手で哺乳瓶からミルクを飲ませる哺育をした最初の牛。
その時に娘がミルクをやってる映像も残ってました。
自分がミルクを飲ませた子牛,その子が大きくなり肉牛として出荷,そして屠畜の日を迎える…。

文才がないので気持ちの襞の部分までは,なかなか言葉に出来ないのが本当にもどかしい限りですが,
これが我々,”牛飼いがやってる仕事”なんだと。

昨年9月のことでブログに書こう,書こう,と思ってたのですが,なかなか筆をとる気持ちも時間も整わなかったので。

その子牛が誕生した時の映像がありました。
40.2kgで和牛としては大きく産まれてきました。

初めての哺育の子だったので皆が群がるように。
注目を浴び,ちょっぴり緊張しながらミルクを飲んでました。

そんな子牛も32ヵ月後で920kgまで大きくなって出荷の日を迎えました。

 翌日,屠畜場で最後の立っている勇姿を,娘は傍でじっと見つめていました。 どんなことを想っていたのでしょうね。

 この直後,ノッキングにより”生物から物体”へと変わる瞬間を目の当たりにしました。

 畜産業界の構造上,生産者が自分の育てた牛(肉)を食べることが本当に少なくなっているのは憂うべき事実。ですから『農と食の乖離』が生まれているのは当然のことだと思います。 幸いなことに梶岡牧場は,産まれた牛が大きくなって肉となって牧場直営のレストラン『FIRE HILL』に帰ってくるというフィールドがあります。

 ただし,その間にこうやって本当に沢山の人が関わって下さり,バトンを繫いで下さっている事を決して忘れてはならないと肝に銘じております。
いくら『牧場~レストラン』までとはいえ,そこをキチンとしっかりやって下さる方々がいらっしゃるから『命が繋げている』ということに深謝しています。

 屠畜前に物思いにふけっていた娘も屠畜が終わり,覚悟が出来たのか,まったく物怖じすることなく,でも,いたわるように屠畜直後の牛の頭部を持ち上げ『舌骨』という部分を探す娘。図解や3Dソフトで確認してたらしく,どうしても舌骨の動きを確認したかったらしいです。屠畜場の方もその姿にビックリされてました。

お肉となって牧場へ帰ってくる。

 そして数日後,美味しいお肉となって梶岡牧場のレストラン『FIRE HILL』に帰って来ました。ちゃんとお肉になっても輝いてました。まるで生きてるような輝きです。食べた私たちの血となり肉となり,私たちの身体でこの子は生き続けるんだと。まさに”You are what you eat.”なんです。

希少部位いう本当に希少な部位『センボンスジ』
名前と見た目と裏腹に,凄く味があって焼肉にすると超絶美味しいんです。

 娘が晴れて獣医師になれた時に,
この経験や想いがしっかりと根っこに張ってくれてることを願っています。

 私たちは畜産家(牛飼い)として美味しく育ててやらなければなりません。
牧場のレストラン『FIRE HILL』や,嫁いだ先のレストラン,家庭の食卓で,
『梶岡牛』を手に取ってくれた人たちが口にした瞬間,思わず笑顔になる…
皆さんを幸せな気持ちにしてくれる,そんな子達に育ててやりたいんです。

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